鱧(はも)は、ウナギ目ハモ科に属する海水魚で、細長い体と鋭い歯を持つ獰猛な捕食者です。
上下の歯列が異なることで、噛み合わせがジグザグになり、獲物に深く食い込むような噛み方が可能になります。これにより、タコやイカなどの柔らかい獲物でも逃げられにくくなります。
鱧は夜行性で、暗闇の中でも獲物を素早く捕らえる必要があるため、鋭く複雑な歯列が有利に働きます。実際、釣り上げた鱧は非常に攻撃的で、噛まれると危険なほどです。
特に関西地方では夏の味覚として親しまれ、京料理には欠かせない存在です。梅雨の雨を飲んで旨くなるとされることから、初夏から盛夏にかけて旬を迎え、祇園祭の頃には「鱧祭り」と称されるほど料理の主役となります。鱧の最大の特徴は「骨切り」という技法で、細かく並ぶ硬い小骨を職人が包丁で細かく刻むことで、口当たりの良い食感を生み出します。湯引きにして梅肉を添えれば、淡白ながらも深みのある旨味が引き立ち、見た目にも涼やかな一品となります。また、鱧は生命力が非常に強く、輸送中も生きていることが多いため、古くから高級食材として重宝されてきました。味覚だけでなく、季節や文化を感じさせる魚として、日本料理の美意識を体現する存在です。